いま、思うこと〜提言・直言・雑感〜 工藤茂

第159回:中国を煽りつづける高市政権

 2026年は日中関係がぎくしゃくしたまま迎えた。すべて高市早苗首相の台湾有事をめぐる国会答弁に端を発したことだ。このまま放っておいてよいはずはないのだが、不思議なことに、高市氏にはどうにかしようという動きはみられない。
 首相の年頭所感を読み返してみても、「自由で開かれた国際秩序は揺らぎ、覇権主義的な動きは強まるとともに、政治・経済の不確実性が高まっている」という文言があるが、それらに自分が大きく関わっているという自覚はみられず、他人事のようだ。
  
 昨年末には、議員間交流の継続を求め、超党派の「日中友好議員連盟」が訪中を模索したが、最終的には実現に至らなかった。驚いたことに、同じようなタイミングの12月16日、自民党の萩生田光一幹事長代行が台湾を訪問予定という報道があった。記事を読めば、萩生田氏だけではない。鈴木馨祐[けいすけ]法務大臣、長島昭久氏、河野太郎氏など、年明けにかけて30人の自民党議員が台湾へ渡航するという。
 いくらなんでもこんな微妙な時期にと思ったが、それを取り消す報道もなく同22日、萩生田氏と頼清徳総統が台北で会談、「台湾は日本の重要なパートナーで友人」などと語ったと伝えられた。
 日中議連幹部は「中国はますます固くなる」と懸念を示したという報道(「JIJI.COM」2025年12月21日付)もあって、日中議連の動きと高市氏の意向は無関係なことがわかる。政府が日中関係を改善しようとしているのなら、議員団を台湾へ送り込むといった動きにはならない。同じ自民党内でも、森山裕氏、小渕優子氏ら日中議連の議員たちと政府側との間には大きな溝があって、政府側には日中関係の修復など念頭にもなかった。
 高市政権は日中関係を壊そうとしている。これが高市氏の言う「中国には毅然として向き合う」ということのようだ。
 
 小欄157回(2025年11月)で、高市・習近平両氏による日中首脳会談を取り上げた。挨拶を交わしておよそ2分後、高市氏は習氏に対して、最も触れられたくない政治的敏感な問題をずけずけと指摘したという一件だ。その後の報道で明らかになったのは、それらの問題には触れないようにと事前に官僚からレクチャーがあったという事実だ。高市氏はそれを無視し、習氏相手に「してやったり」というつもりでずけずけとやったのだ。
 台湾高官との会談写真のX投稿強行と同様、すべて承知のうえのことだ。台湾有事の国会答弁も用意された答弁書を無視してのことと判明している。そしてこの微妙な時期の自民党議員団の台湾訪問である。中国とは徹底的に対峙する――高市政権の方針なのだ。では、その先には何があるというのか。
 
 年末に、高市氏がトランプ氏にしきりに会いたがっているという報道が流れていた。通常の感覚なら、真っ先に会わなければならないのは習近平氏のはずだ。天木直人氏などは、習氏を訪ねて通訳だけを交えた密室の会談で平謝りするしかないだろうと記していたくらいだ。
 トランプ政権2期目で初となる「国家安全保障戦略」が公表されたのは昨年12月5日だが、そこには、アメリカの西半球重視の方針とともに、対中温和姿勢が随所に記されているという(遠藤誉氏「エキスパートブログ」2026年1月4日付)。
 遠藤氏は、高市氏や周辺の官僚たちはこの「国家安全保障戦略」を読んでいないのではないかと危惧している。トランプ氏の方針の変化を理解しているのなら、中国に嫌がらせをしようとはしないだろう。会談に入ったとたんに「よけいなことはするな!」と戒められてもおかしくはない。
 その後もトランプ氏の立ち位置には大きな変化がある。ベネズエラへの電撃急襲、大統領夫妻の拉致、石油泥棒という桁違いの蛮行へと大きく踏み込んでしまった。さらにイランやデンマーク(グリーンランド)を恫喝し、「(自分に)国際法は必要ない」と居直っている存在相手に、いったい何を相談しようというのか。
 
 高市氏の国会答弁の報道をみたときには、1972年の日中共同声明を破棄するつもりかと思った。いや、破棄しなければ口にしてはならない内容だった。
 だいぶ古い話になるが、石原慎太郎氏はいまの野望は何かと問われ、「支那(中国)と戦争をして勝つこと」と答えている(『週刊現代』2014年8月9日号)。
 高市氏も石原氏と同じことを考えているのではあるまいか。軍備増強も、中国と戦って勝つためのものだ。おそらくその先はない。中国に勝つことだけが目的だ。台湾有事といえばアメリカ、台湾が絡んだ話になるが、本音は台湾有事ではなく、中国に勝つことではなかろうか。高市氏の前のめりの姿勢をみていると、そのようにみえてしまう。
 天木氏がいうように、遅まきながらも習氏を訪ねて謝罪、撤回するつもりならまだしも、今後も喧嘩を売りつづけるつもりなら、もはや首相辞任しかないだろう。
 来日中の韓国の李在明[イ・ジェミョン]大統領の口から出たのは「韓米日」や「韓中日」であって、高市氏から出たのは「日韓米」。残念ながら中国への配慮はみられなかった。
 
 動きをみせない高市氏にしびれを切らしたのか1月7日、中国政府は日本に対して、軍用・民間用品や材料について輸出規制の強化を発表した。そのなかにはレアアースも含まれるらしい。高市氏が悲鳴をあげるまで、じわじわと締め付けてくるつもりのようだ。
 さらにここにきて、自民党と旧統一教会との癒着や高市氏の迂回献金疑惑報道があり、続いて衆議院解散の話が出てきた。情けないが、これは国会での疑惑追求逃れとしか受け取れない。高市氏には国会からとっとと退場願いたいところだ。奈良県2区の有権者の賢明な選択を望みたい。(2026/01)



<2026.1.15>
 

所信表明演説をする高市早苗首相(2025年10月24日、首相官邸HPより)

いま、思うこと

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 第10回:ぼくの日本国憲法メモ ②

  
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工藤茂(くどう・しげる)

1952年秋田県生まれ。
フリーランス編集者。
15歳より50歳ごろまで、山登りに親しむ。ときおりインターネットサイト「三好まき子の山の文庫」に執筆しているが、このところサボり気味。

工藤茂さんの<ある日の「山日記」から>が読めます。LinkIcon