いま、思うこと〜提言・直言・雑感〜 工藤茂
第164回:ホルムズ海峡情勢その後
テレビの報道番組で「(ナフサ不足で)このままでは、日本は6月に詰む」と訴えたのはコネクトエネルギー合同会社CEОの境野春彦氏だった。翌日に高市早苗首相に否定され、ネット上で叩かれて一時はメゲそうになったものの気を取り直し、専門家として気丈にメッセージを発信しつづけてくれている。
続いて丸紅元取締役会長の國分文也氏が、「ナフサ由来の化学製品は早ければ6月末には供給不足が生じる可能性がある。中東から調達していた1500万キロリットルのナフサを代替調達するのは不可能」と指摘した(「ブルームバーグ」2026年5月25日付)。
代替調達不可能性については境野氏が当初から言及していることでもある。原油に関して6月6日、アラスカ産や南スーダン産などの代替原油が到着したようだが、73万バレル、23万バレルなど、合わせても我が国の使用量の半日分にすぎない。やはり中東頼みのようだ。
それでも高市氏はナフサは足りているの一点張りだ。赤沢亮正経産大臣は6月9日の会見で、「もっとナフサの稼働率をあげたらどうか。やはりナフサは足りていないと認めたらどうか?」と突っ込んでくる記者たちに反論した。「ABEMA TIMES」(同年6月9日付)記事から抜粋してまとめる。
「原油を精製するとナフサは10出てくる。ガソリンが29、軽油が24。ナフサのために増産すると、ガソリンや軽油は必要以上にできてしまう。それを備蓄するところがないというのが現実的な問題だ」
「原油や石油製品は、全体として必要となる量は確保できている。原油を精製してつくったナフサに輸入したものを加え、国内在庫も取り崩す。それらを合わせれば必要な量は足りている。3月以降に設備の定期修理が集中したため生産量は落ちているが、夏ぐらいまでには回復するはず。それまでは国内在庫を取り崩したり輸入を増やしたり調整しながらやっていく。幸い代替調達が順調で、1.8カ月分あった在庫も0.1カ月分減らしただけで済んでいる」
「たとえば、シンナーの材料トルエンについて、メーカーが『4月は例年どおり、5月は未定』という連絡を受けた場合、4月の供給量を絞って5月に備えるという調整が起きてしまう。あるいは接着剤に関して『いつもの10倍確保したから安心だ』という会社が出てくると、全体がうまく回らなくなってしまう」
赤沢氏の言い分をそのまま受け入れたとしても、すでにうまく回らなくなっているのが現実だし、取り崩していった国内在庫はいつまでもつのかという問題が残るようだ。やはり、可能な限り早いホルムズ海峡の開放が求められるのであろう。
6月1日、イランのマスウード・ペゼシュキアン大統領と高市首相の電話会談があった。Xを眺めていたところ、前川喜平氏が「ブルームバーグニュース」の記事を引いて、「ホルムズ海峡、アメリカが通れるまで日本は通りません? そんな首相、日本に要らない」と投稿していて啞然とした。
高市氏が「アメリカが通れるまで日本は通りません」と応じたものと思ったのだが、そういうことではなかった。あくまでも前川氏のおちょくりである。
「ブルームバーグ」の報道内容はおよそ次のようなものだ。
ペゼシュキアン大統領は日本の船舶について、「これまで以上に容易かつ問題のないホルムズ海峡通航を保証する」とXに投稿し、高市氏との電話会談でも同様の発言をした。また「イランは円滑な海上交通を確保する準備が十分に整っている」「主な問題はアメリカによるイラン制裁やイランの海運・貿易を制限する措置に起因している」とも語ったという。
これに対し、高市氏もペゼシュキアン氏との電話会談についてXに投稿している。
「話し合いで事態を沈静化させ、日本やアジア諸国を含むすべての国の船舶について、ホルムズ海峡を一日も早く自由で安全に通過できるように、改めて強く求めた。両者は今後も緊密に意思疎通を続けていくことで一致した」
会話が成立しているのかどうか微妙だ。ペゼシュキアン氏からのせっかくの厚意を無碍にしているのではなかろうか。ボールは高市氏に渡されているのだが、高市氏にはその自覚がない。ボールをキャッチする気がないようにさえ思える。これが三度目の電話会談というが、ずっとこの調子なのであろう。ペゼシュキアン氏は首を傾げたまま15分間の会談を終えたのではあるまいか。いずれにしろボールは高市氏に渡されたのであり、時間だけが無駄に過ぎていくのであろうか。
前回の記事でタンカー出光丸のホルムズ海峡通過に関して、日本政府が支援したかどうか正確なところはよくわからないとしておいた。また、鳩山由紀夫元総理、川内博史前衆議院議員ら6名が駐日イラン大使館を訪問、セアダット大使と面談したことにも触れた。この6名には冒頭の境野氏も含まれ、彼らはオンライン署名「生活と平和を守るために――イランとの友好的外交による船舶通過の実現を求めます」(略称「生活と平和ための提言」)の発起人である。
その境野氏のXから、セアダット大使との面談の際に、出光丸通過については日本政府からの個別要請ではなく、イラン政府の判断で行われたことが伝えられていたことが判明した。この件は境野氏自身も出光関係者から直接確認したという。
さらにイラン政府としては、海峡通過については民間からの直接交渉ではなく、日本政府からの個別交渉が必要とのこと。日本政府はアメリカを含むすべての船舶の通航を繰り返し求めていて、とうていイラン側が受け入れられるものではないという。
一方、ホルムズ海峡を通過したENEОS系タンカーは6月6日に根岸精油所(横浜市)に到着したが、同タンカーの海峡通過に関しては「イラン側の許可を得て……」(「日テレNEWS」同年6月3日付)とあるところから、少なくとも日本政府の支援はなさそうだ。前川氏のいう「アメリカが通れるまで日本は通りません」は、まったくの冗談ともいえないようだ。いくらなんでもアメリカに忖度しすぎではないか。
「ブルームバーグ」(同年5月30日付)によれば、イラン戦争勃発時にペルシャ湾内に足止めされていた積載能力70万バレル以上の大型原油タンカー109隻のうち、すでに29隻が同海峡を通過している。少しずつ、目立たない形で通過しているという。現在停泊中の日本関係船舶は38隻である。
イラン戦争の今後の見通しだが、極めて悲観的にならざるを得ない。最近の状況から勘案するところ、イスラエルがレバノンを攻撃しつづける限り終結はない。イスラエルはレバノンをガザのように破壊し尽くすつもりだし、再びイラン攻撃へと向かうのであろう。トランプ氏がそれを阻止できるかどうかだ。ホルムズ海峡の開放など、いつのことになるのか予測もつかないし、このまま年を越すかもしれない。
高市氏は、この難局をどう切り抜けるつもりだろうか。中国との外交問題も放置したままだ。じわじわと、我々の日常生活にもさらに影響が及んでくるのであろうか。 (2026/06)
<2026.6.10>
白黒包装のカルビー「ポテトチップス」(Xより)















































































































